治験コーディネーターで一番大変なところを経験者7人に聞いてみた
コミュニケーション
治験コーディネーターの大変なところは、やはり患者さん、医師、製薬会社の間に挟まれてコミュニケーションを円滑に測ることによって一つの治験がスムーズに進むことになるのでその橋渡しをしなければならないのがコーディネーターです。ですから仕事内容が多すぎて多忙を極めます。
一つ一つの仕事に対してミスがないように神経を集中させていないといけないのもかなりストレスがたまります。これを怠るとその治験そのものがボツになってしまう危険性もあるので、常に慎重さが求められます。
これだけの繊細かつ緻密な仕事内容が全てコーディネーターの肩の上にのしかかってくる割にはお給料はあまり良くありません。そのためコーディネーターの入れ替わりが結構激しかったです。
もちろん患者さんからのクレームもありますしそれに対処するのもかなり苦痛な作業でした。治験参加前には一人一人の患者さんから副作用の可能性についての説明をし、同意をしていただく必要がありますが、これも大変骨の折れる作業でした。
治験は、新しい薬の人への有効性を調べる検査みたいなもので、まだ世に出ていない薬なので治験者の精神的な不安は大きいと思います。普通のアルバイトなどより報酬も割高な分、期間中に採血を何度もしたり体への負担も大きいように思います。そこでその治験者たちの不安を和らげるなど担うのは治験コーディネーターです。
コーディネーターは治験者だけではなく医師や製薬会社との調整も行うのでとにかく関わる人が多くいちいち人見知りをしていると大変です。うまく人と関わり業務をこなしていかなければなりません。それゆえに、一般の事務のように仕事が終わったらすぱっと帰るような仕事ぶりができず残業することになるケースも多いです。
人の不安と向き合うわけですから、自分が強くないと心が折れてしまいます。
また、一刻も早く新しい薬を世に出し多くの人のためになりたいと思って仕事をしていても、人体実験なのでは心無い言葉を受けることもあり信念をもたないとやっていけないなと思います。
治験コーディネーターをしてみて大変だと感じることは人同士を適切に仲介するということです。
治験には製薬会社・医師・検査者・患者さんなど多くの人が関与します。その中でコミュニケーションに齟齬が生じるとその後の治験でトラブルが起こりデータが使えなくなったり、多くの修正を行ったりする必要が出てきます。
また、それぞれの立場からの思いがあります。製薬会社は正確で非の打ちどころのないデータを収集したいので、数多くの検査などを要求する場合があります。しかし、実際の現場でそのデータを収集しようとすると通常業務を圧迫するほどの負担が生じるため、医師や検査者から反対を受けることがあります。それぞれの意見を調整し、適正な状態に持っていくことがなかなか大変です。
また治験に参加できる患者は基準が決まっており参加できる患者をピックアップしたうえでアプローチをかけていくのですが参加条件を満たしていても、今使っている薬が使えなくなるなどの制約から参加したくないとおっしゃる患者さんはもちろんいます。治験は無理強いできませんが人数は集めなければいけないなどの要求もあり、適切な説明と患者さんの不安にしっかり応え参加してもらえるよう促していく必要があります。
そのような対応が一番大変ですが、うまくいった時に一番達成感がある作業でもありますね。
治験コーディネーターは、治験の内容を理解しておかなければなりません。その治験の条件に当てはまっている人なのかということや、治験をどういうものか知らない人に治験を説明すること、いつどのタイミングで来院してもらえるかなど、沢山のことをしなければなりません。
何枚もある資料から、どのような治験の内容で、どう説明すれば患者さんに伝わるのか、患者さんにはどういうメリットデメリットがあるのか、すべて理解してもらえるように説明しなければならないため、とても大変だと思います。また治験に参加することで、その治験薬によって考えられる副作用も説明する必要があります。
また治験は最先端の治療であるため、口外してはいけないことが沢山あります。
治験の種類にもよりますが、治験によっては、プラセボがあたるか、本物の薬があたるか、どっちがあたるかわからないということを説明しなければなりません。プラセボがあたるかもしれないと説明するのは、とても心が苦しいことだと思います。
このように治験コーディネーターは大変な仕事だと思います。
忙しい
担当試験の治験開始時期が何本も重なると大変です。
同時期に同じ準備をするので取り違えやすい。それに、締め切りも同時期となるため、倍量以上の仕事量をこなさなければならず、質の維持が難しい。
複数の試験分の資料を準備、治験対応の打ち合わせに追われ、連日残業となります。複雑な内容の試験があると残業時間も長くなる。加えて、日常は既に実施中である試験の対応もこなさなければなりません。
CRC業界は常に人手不足のため、何本も治験を担当することがほとんど。開始時期が重なると、その治験のスタートアップミーティング、1例めの組み入れまでは資料の準備、打ち合わせに追われる。
各試験にはだいたいメイン担当とサブ担当がつき、分担して準備できるようにしている。が、サブ担当も自分の業務に追われているため、実質メインのみでこなすことが多い。
その傍らでは、実施中の試験に参加している被験者さんへの対応もスケジュールされているため、来院時の対応、体調管理、治験依頼者への報告、治験データ入力などの業務をこなさなければならない。
時間がいくらあっても足りず、さらに経験の浅いCRCほどペース配分がよくわからないため振り回されやすい。このため、治験開始時の試験が複数重なる時期の対応が最も大変と思われる。
たくさんの試験をかけもちして仕事をしなければならないが、ひとつひとつの試験にかかる時間が膨大なためオーバーワークとなっている。
ひとりのCRCは最低でも10個の試験を担当する。しかし、ひとつの試験を担当するだけでも最低でも被験者対応、検査の発注・管理、症例報告書の記入、担当医師への内容確認、CRA対応、IRB申請書類の作成と保管 、これらの業務が発生する。毎日、日替わりで異なる試験を動かす必要がある。
一番大変なのは、症例報告書の作成。各試験で、同じような症例報告書なら良いが、記載方法や、入力すべきデータの定義も異なるため、混乱する。また対応するCRAの質によって、仕事量は左右される。CRAも人手不足で転職が多い業種のため、不慣れなCRAは往々にして多い。CRCとしては、CRAの指示を信じて従わなければならない面もあるため、的を得ない質問をしてくるCRAや間違った情報を提供してくるCRAが来ると、対応するだけで時間がかかることもストレスのひとつとなる。
残業は当たり前で、デスクワークも被験者対応もどっちも多いため肉体的にも疲労する。だいたい試験の終わりは、業務が多く平均的に深夜まで残業もしくは持ち帰りの仕事をしている人が多い。
看護師や薬剤師など、国家資格を持っている人が多いにもかかわらず、給料は資格で働くよりも低い。業務量だけで見れば、そこまで条件は良くないのに見合わないこともストレスに感じている。
ノルマ
治験コーディネーターの仕事で一番大変なことは、ノルマを達成しなければならないことです。
一般的に医療関係の仕事にはノルマはありませんが、治験コーディネーターの仕事にはノルマが存在します。ノルマという言葉を使っていないSMO会社であっても、治験コーディネーターには治験を受ける患者さまを一人でも多く獲得することを要求します。
SMO会社は営利企業ですので、治験を受ける患者さまを増やすことが会社の売上アップにつながります。よって、SMO会社は治験コーディネーターに対してノルマを課すというわけです。
SMO会社のミーティングや朝礼では、治験コーディネーターはノルマの達成度について報告することが必要になります。もし、締め日までにノルマを達成できなかった時には上司から叱責されますし、ミーティングでは針のむしろに座るような辛さを味わいます。
もちろん、ノルマを達成できれば上司から賞賛されますし、給料もアップしますので、治験コーディネーターの仕事はまさに実力主義の仕事です。