消防士で一番大変なところを経験者に聞いてみた
緊張感を持ち続ける必要があるため疲れる
消防士は本当に大変な仕事です。災害があれば一番に危険な場所に行かないといけないですし、火事があれば火傷の危険と隣り合わせだからです。
そしてその危険に対応するために日頃から訓練をするのですが、その訓練も本当に大変です。あまりにもきつい訓練なので、根を上げる人もたくさんいます。
しかし私にとっては一番大変だったのはこのような事ではありませんでした。いつでも緊急時にそなえるというストレスが一番大変でしたね。いつ呼び出されるかもしれないという緊張感があり、そのストレスは半端なかったです。そのストレスのため胃潰瘍になったこともありました。しかも年中無休でしたから。
しかしいざ出動した時に助けた人から「本当にありがとうございます。」と言われた時には、そのストレスもあっという間に飛んでいきましたね。この仕事はこのような快感もあるので、日常で緊張感があってもやっていく事ができる仕事なんだと、今でも考えています。
勤務中は緊張感を持ち続ける必要があります。日々の訓練は地味ですが、疲れるところです。いざ出動となると、重労働な上に、精神的なプレッシャーが大きく、心身ともに疲弊するところです。
そして、直接的に喜ばれたり、感謝されたりすることがすくないので精神的な充足感・満足感が得られることが少なく、自己満足で我慢するしかないところもあります。
文字通り、火中に飛び込むこともあり、生命の危険と隣り合わせのところです。類焼を防ぐことは出来ますが、すでに出火しているところの被害を無くすことが出来ないので、完全に防御出来ることがなく、その点も精神的充足・満足につながらず、フラストレーションが溜まるところです。
現場に到着するまでの時間がもどかしく、気ばかりが焦って落ち着くことがありません。到着してからは、修羅場でさらに気が落ち着くことはなく、アドレナリンが出っ放しで、作業を終えたときに、一気に精神的な疲労に襲われるところです。
自由に休めない
一般的な企業とは違い、自由に休めないことだと思います。そもそも一般的な企業と勤務時間や勤務体制が違いますし、非常時こそ働かなければならない仕事なので気軽に休めないのがつらいです。
大型の台風の上陸が予想される場合はその前日から泊まりの勤務をすることもありますし、大きな地震が起きたらその対応をするために休みの日の夜中でも連絡がきます。
昨今では火事や救急以外にも台風や水害、地震といった自然災害が増えているため、大きな被害がなかったとしてもすぐに対応できるようにしなければならないため、非常時は例えやすみの日でお酒を飲んでいたとしても、急遽出勤になってしまうこともあります。
また、旅行で県外に行くことになった場合には事前に届出が必要です。前述したように、もし旅行中に非常事態が起こった場合にすぐには駆けつけることができないため、職場に届けを出しておくことになっています。その点でも例え休みの日だったとしても気軽に出かけたり休んだりするのが難しいと言えます。
感情移入しないこと
私が消防官として働いていた時、東日本大震災や御岳山噴火などの災害がありました。私自身、災害派遣されることはありませんでしたが、出動していく隊員達へのフォローや準備、調整で夜遅くまで仕事をしていました。
災害出動の準備も大変でしたが、私が一番大変だと感じたのは、現場で感情移入しないことの難しさです。
出動として記憶に残っているのは、救急隊員として自損(自殺)事案に出場した時に、首を吊った家族を下ろそうとしている家族の姿や、そのあと救急車ないでも取り乱している姿は消防官を退職したいまでも忘れることはできません。子どもが大けがをした母親もそうですが、叫ぶ身内の姿は心に残っています。
そうした経験を得て、救急隊員として成長していくのでしょうが、最初の頃は気持ちの整理をつけることがとても難しく、現場に感情移入しないことが消防官として一番大変なことなような気がします。火災現場でも同じです。自分の家や家族が燃えていくのを見て、平気な人はいないと思います。
消防学校
夢をもって消防士を目指し、ルーキーで入庁しました。
消防学校時代の半年がつらかった。週末しか帰れず、あとは学校内の寮にはいり、規律をまもる。食事も風呂もみんな一緒にはいる。飲酒は週末のみ、あとは毎日の辛く厳しい訓練で吐く奴もいた。
10 月に、それぞれまずは本署へ配属される。火災など滅多になく、入電はいつも救急。新人は、救急車には乗れないため、誘導などの雑用をする。
事故もあるが、救助隊がメイン出場のため、これまた新人は雑用。機関員もまだできない。やることは、訓練と夕食のまかないつくり。
料理をしてこなかった隊員には、この上ないキツさである。だいたい、カレーや牛丼など簡単で1品ですむものを作るようになってしまうが、先輩たちから文句を言われるため、次の勤務で何を作るか前の日から胃が痛くなるくらいかんがえる。
あまりに料理が苦手な隊員は、料理当番の日に、親から作ってもらったのを持ってくる者もいた。もちろん、入電が入れば中断するが新人は、基本、入電があっても料理をつくっていた。
体育会系の乗りがひどすぎる
体育会系の乗りがひどすぎる事です。役職が同等レベルになるまで、話しかけるなという圧力を感じます。
指揮系統に影響がないようにという考えもわかりますが、そのような雰囲気は大きな問題であると思いました。
被災者に影響のない業務ならまだしも、被災者に影響のある現場で、役職のある人たちが絶対に間違っている事を指摘出来ずに、被災者を苦しめる結果になった事は、とても辛くて心苦しかったです。
なぜ役職のある人たちのために、被災者を助けるために苦労を重ねて消防士になったのに助けられないなんて、大変やるせない気持ちです。
間違った事をしている役職のある人たちに注意や間違いを指摘した人達が何人もいたのですが、犬が飼い主に噛みついたような評価をされてしまい、ずっと目を付けられています。まるで有名野球部の上下関係のようです。
現場は上下関係なんて関係なく活躍した人を称えるべきであり、バスケットボールの先輩後輩のようなフランクな関係であるべきだと思います。
命がけ
一番大変なことは、消火作業をしているときに自分自身が命を失いかねないことです。
戸建て住宅や木造アパートで火災が発生した場合、真っ先に消防車に乗って現場に急行して、ただちに消火作業を開始するわけですが、我々の消防車が到着するころには火の手が広がっているケースが多いです。
木造の場合は防火構造が貧弱ですから、火の回りが早いのです。このため、消火作業をしている最中に、煙に包まれてしまい、誤って煙を吸い込んでしまうと一酸化炭素中毒になりかねません。一酸化炭素中毒になってしまったら、高い確率で死亡してしまいます。
実際、消防士が現場で殉職した場合の死因は、圧倒的に一酸化炭素中毒が多いです。
私も築45年の古い木造アパートで火災が発生したときに現場に急行し、消火作業に携わったことがあります。このとき、アパートの内部に潜入しようとしてドアを開けたところ、一気に煙が噴き出てきて、少し煙を吸ってしまいました。その場で私は倒れてしまい、すぐに救急車で病院で運ばれ、高気圧酸素療法をしてもらったおかげで命拾いをしたことがあります。
その当時は現場の経験が少なかったため、判断力が低かったのです。