その仕事で一番大変なところ

漫画家で一番大変なところを経験者に聞いてみた

原作者とのコミュニケーション


それは「自分と他人との完成に向けての意識齟齬(そご)」です。砕いて言うと「描き手と担当者」「描き手と原作者」との『感性の違いから来る現実』が大変です。

 

例えば、担当者や原作者は「描き手の好きなように描いてくれたらいいよ!」と言われます。そして執筆サイドが思うままに描くと、担当者や原作者が「これは私の考えてる内容とは違います」といった回答を持ってくることです。「あ、ここは私が考えていた表現とは違いますね。それでは描いてくれた貴方のこの部分を使いますから、これこれこういった方法で表現できますか?」といった「スムーズに相談へと持ちかける状態」が成立しないことがあまりに多いことです。

 

世間は(私の経験だと)"原作者がいたら執筆者は描くだけだから楽"と言われてきましたし、また、家族側からそう言う声も聞きました。世間の誰しもがあらゆるジャンルで「ニーズに応えたものを提供してほしい」と思っていると思いますが、不特定多数の方々がそれを実現できるなら、執筆側も担当者側も「コミュニケーション力を磨く」「感情を逆立てない文言を心がける」ことが必須です。尚且つ、「話上手は聞き上手」という言葉があるように、相談中に話を切らないことだと感じています。

 

創作は、喜怒哀楽感情の紙面表現とも言えますので、リアルな相談こそ、和やかでないと大変なことになります。実際、色々と原作者がわとあった上での体験ですが、そのおかげで双方ともに大人になり、今も共同して漫画を描いています。

 

ネーム作業


私が漫画家の仕事で一番大変だと思うのは、ネーム作業です。

 

ネーム作業は、ストーリーを考え、コマやセリフ・絵の配置を決める設計図の段階です。キャラクターのことを理解していないとストーリーは進まないし、読者が夢中になるようなヒューマンドラマは生まれません。

 

自分が思うように描いた後で、読者が夢中になれる内容なのか、読みやすい画面作りかなど、何度も描き直します。連載を取れるまでは特に、10回描き直すなんていうのは普通なので、最初は楽しく描けても、だんだん心が折れそうになります。(私は一度折れました)。

 

ネーム=つまり内容だけの時点で読者の心を掴めるような内容でないと、雑誌の連載会議に回して貰うことすら出来ません。連載会議に出してもらっても、連載させてもらえるとは限りません。

 

私が初めて連載会議に回してもらった時、落選してしまったのですが、理由が「デビュー作のイメージと違いすぎる。もっと描けるはずだ。」でした。担当編集者に聞けば、「ネーム自体は問題ないが、私のイメージを崩すな」といった感じの返答でした。

 

つまり同じネームでも、他の人が提出すればOKだった可能性もあるかもしれません。なのでネームは、作者のイメージも保たなければならない…もしくは、イメージを壊していても、面白くて読者を夢中にさせるだけの力があるべきだということです。私は最初の経験でそれを学ぶことが出来ました。

 

とはいえ、結局、面白いネームが勝るのです。最初の読者は雑誌編集者です。面白いの基準は雑誌によって様々で、それに対応したネームを描くことは、とても難解で苦しいです。これがある意味、自分との戦いに発展していくのだと思います。

 

頭の中のイメージ通り描けない


一番大変なことは、実際に描いて見て頭の中のイメージとかけ離れている時です。

 

とてもいいストーリーが浮かんでいて、素敵なキャラクターが頭に浮かんでいるのに、何度描いても上手く表現できない時は、かなり落胆して絶望感に襲われます。キレイな絵を描いても売れない漫画家がいるのに、こんな素人みたいな絵じゃ絶対に大勢の人々に評価されないと思い、また挑戦するのですが、失敗の連続で時間だけが経つ時は本当に焦ります。

 

時給のお仕事ならお金がもらえますが、漫画家は出来高制ですので、経済面でも大変です。そうやって、漫画家の仕事を辞めていった人々を大勢知っているので、今度は自分の番かと思いました。野球の投手がイップスになって、本来の投球が出来なくなった感じで、急に下手な絵しか描けなくなりました。

 

しかし、ある時からあまり気にしないようにして、少しずつ楽しみながら描くようにすると、上手に描けるようになってきました。あまり、自分に厳しくなりすぎるのも良くないようです。

 

締め切り


一番大変なことは、締め切りに常に追われることです。締め切りに余裕で間に合ったことはありません。

 

理由は、漫画を描く前提となる舞台を事前に取材する必要がありますし、必要な本をかたっぱしから読んで、表現や言葉遣い、時代に応じた服装に違和感が生じていないかや、時代考証を間違えていないかなど、あらゆる事前チェックをしなければならないためです。そのため、常に締め切りに追われるのです。

 

実際、私が戦国時代から安土桃山時代にかけての歴史漫画を描いていたときには、時代考証を入念におこなうため睡眠時間さえ削りました。毎日睡眠3時間でした。それほど時間を費やして、当時の馬の体型が、実は現代社会のサラブレッドのような大型ではなく、ロバと同じレベルの大きさであったことを知ったり、織田信長の軍勢だけは現代社会での物干し竿ほどの長さの槍を使っていた事実を掴むことができるのです。

 

もし、織田信長の軍隊が普通の長さの槍を使っているように描写したら、読者からクレームが寄せられることは間違いなく、最悪の場合は連載中止に追い込まれてしまいます。そのため緊張感をもって、事前準備をしなければならないのです。

「お前に正社員は一生無理」

こういったパワハラを上司にされ続けた僕は、入社3か月目で転職を決意。絶対に見返してやると思いました。

現実は過酷でしたが。

  • 15社に書類送付
  • 書類選考に通ったのは4社だけ
  • 最終面接まで行ったのはわずか1社

でも、ある方法に気づいた結果、年商52億円企業の正社員として働いています。かつての僕のように傷のある経歴で苦戦している方のみご覧ください。

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